« 第38話 | メイン | 第40話 »

2005年05月10日

第39話

鈍い音の後、間も無く軽快な音が耳に響いた
テーブルに拳を打ち下ろしたひろきの足元、灰皿がタバコのカスを撒き散らしている

ひろき「よくないな、よくない・・・」

ひたすらに同じ単語を繰り返すひろきの顔色をどう伺っていいのかわからず、
杏。と西船橋は押し黙ったままだった

やがてひろきはテーブルに叩きつけた拳を胸元に戻し腕を組んだ
荒い鼻息を一度吐いてつまらなそうに吐き捨てる

ひろき「面白くない展開だな・・・全く」

杏。「まさか、あのカジキがやられるとは」

機嫌を伺い取り入ろうとする心積もりより、純粋な驚きから杏。が口を開いた
カジキ鮪子は半肉の異端児であったが、能力は本物だったからだ

ひろき「カジキがくたばったなどどうでもいいんだよ。
    くだらん肉入りの必死どもが、ここまで歯向かってくるのが不愉快なんだ」

革靴を汚す灰皿を軽く蹴り飛ばしてテーブルに頬杖をつく
いくつものアプリケーションが起動するパソコンを覗き込み顔を歪ませた

無作為に選出したKRプログラムでは、今まで生徒が抵抗する事などなかった。
むしろ卒業生は優秀なBOT使いに成長している。
そこで、池沼の集うクラスを作為的に選び、
KRを実行すればさらに優秀な結果が得られるのではないか?

今回の、ROフェンリル高校のKRプログラムは、全てのBOTERを統括する機関
GUN-G-HOの上院議員であるひろきによるものだった。
各サーバーの議員の中で、ひろきはフェンリルでも有力な権力とBOT能力を持っている。
そんな彼の提案が通り、今回のKRがはじまったのだが・・・
生徒が反抗を起こし、実行委員の兵士を巻き添えにしたなど、
そんな戦闘データをGUN-G-HOに提出すれば昇進は難しい。

ひろきは心の底からこれからの展開の改善を願った。
生徒が闘争本能を剥き出しにして殺しあってくれれば良いデータが出るのだ──


心落ち着かないひろきのパソコンが、突如音を発しだした。
ハッとして我に帰ったひろきはキーボードを軽く叩いた

???「やぁ、ひろき。今回のKR・・・いや、君のKRと言うべきか。順調かな?」

いくつものアプリの一番上に開かれたウィンドウには一人の男性が映っていた

ひろき「司令塔か!久しぶりだな、何をしにきた?今はどうしている?」

司令塔「君と同じくBOTER生活だ。たまには肉いりでプレイしているがな。」

ひろき「司令塔・・・」

司令塔「ひろき・・・・・・新しいKore一緒にや ら な い か ?」

ひろき「それどころじゃない、司令塔、良い戦闘データが取れそうにないんだ。
    どうすればいい、君も過去に実行委員だった男だろう?教えてほしい!」

司令塔「混乱しているようだなひろき。案ずるな、危険地域を倍に増やすんだ
    戦闘を余儀なくされた生徒は恐怖し、狂い、殺し合い、素晴らしいデータを残すはずだ」

ひろき「さすが司令塔だ、早速やってみる事にする。恩に着るぞ」

司令塔との通信を切る。コンピュータのマイクに向けてひろきは相変わらずの
安穏とした声で危険区域を次々と発表していった───

投稿者 lirim : 2005年05月10日 20:51

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)